本記事では、AWS Bedrock LLM Day Japan の「AWS Keynote と最新アップデート」セッションで紹介された、Amazon BedrockおよびAIエージェント関連サービスのアップデートをレポートします。
本記事は、2026年7月28日(火)に開催されたAWS主催 AWS Bedrock LLM Day Japan で発表された内容をもとに作成しています。対応モデル、リージョン、料金、利用可能な機能、データ保持仕様などは変更される可能性があるため、実際の導入時には必ずAWS公式ドキュメントをご確認ください。
忙しい人向け: アップデートの要点
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Amazon Bedrock
- Anthropic、OpenAI、Meta、Mistral AIなど、フロンティアモデルからオープンウェイトモデルまで幅広く選択できる生成AI基盤
- ユースケースに合わせ、性能・コスト・レイテンシー・リージョン要件を考慮してモデルを使い分けられる
- AWS PrivateLinkなどを利用し、エンタープライズ向けのネットワーク・セキュリティ要件に対応できる
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Amazon Bedrock AgentCore
- AIエージェントを本番環境で運用するための基盤
- アイデンティティ、ツール連携、メモリ、サンドボックス、可観測性など、エージェントに必要な周辺機能を提供する
- モデルやフレームワークに依存しすぎない、柔軟なエージェント構築を支援する
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AgentCore Harness
- エージェントのオーケストレーションやインフラ構築の負荷を軽減する機能
- 数回のAPI呼び出しで、動作するAIエージェントを作成することを目指す
- モデルの変更や追加に追随しやすい構成を実現する
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AgentCore Web Search
- 最新のWeb情報を取得し、AIエージェントの回答に根拠として活用する機能
- LLM単体では扱えない最新ニュース、制度改定、製品情報などを扱うユースケースに有効
- Web情報を利用したグラウンディングをAWS環境で実装しやすくする
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Amazon Bedrock Managed Knowledge Base
- 社内文書や業務データを活用するフルマネージドRAG基盤
- S3、SharePoint、Confluence、Google Drive、OneDriveなどのデータソースとの連携を支援
- ドキュメント解析、チャンク分割、取り込み、検索といったRAG構築・運用の負荷を軽減する
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AWS Context
- 構造化データ・非構造化データ、メタデータ、データ間の関係性を扱うためのコンテキストインテリジェンス基盤
- ナレッジグラフやメタデータを活用し、AIエージェントが組織・業務の文脈を理解することを支援する
- AWS Glue Data CatalogやAmazon SageMaker Unified Studioとの統合が紹介された
Amazon Bedrockは「単一モデルに依存しない」ための基盤
セッションでは、単一モデルに固定するのではなく、ユースケースに応じて複数のモデルを使い分ける方向へ移行していることが紹介されました。
Amazon Bedrockでは、以下のような幅広いモデルを利用できます。
- AnthropicのClaude
- OpenAIのモデル
- MetaのLlama
- Mistral AIなどのモデル
- その他のフロンティアモデル
- オープンウェイトモデル
モデルは用途ごとに使い分ける
モデル選定では、「最も性能が高いモデルを常に使う」という考え方ではなく、業務要件に応じて最適化することが重要です。
| 観点 | 選定時の考え方 |
|---|---|
| 高度な推論・コーディング | 高性能なフロンティアモデルを選択する |
| コスト最適化 | 軽量モデルやオープンウェイトモデルを検討する |
| 日本語品質 | 日本語を含む多言語性能を評価する |
| データ・規制要件 | 利用リージョンや実行環境を確認する |
| 応答速度 | レイテンシーやスループットを比較する |
| 運用の柔軟性 | 将来のモデル切り替えを前提に設計する |
オープンウェイトモデルの進化にも注目
これまでは、オープンウェイトモデルは最先端の商用モデルと比較して、性能面で差があると認識されることもありました。しかし近年は、コーディングや推論などの領域で、フロンティアモデルに近い性能を持つモデルも登場しています。
オープンウェイトモデルには、次のようなメリットがあります。
- コストを抑えられる可能性がある
- 独自の環境で運用・カスタマイズしやすい
- 特定の業務・データ要件に合わせやすい
重要なのは、商用モデルとオープンウェイトモデルを対立する選択肢として見るのではなく、性能・コスト・運用・セキュリティ要件に応じて適切に使い分けることです。
エンタープライズ利用を支えるセキュリティとガバナンス
生成AIを企業で活用する際には、モデル性能だけでなく、データの扱いやネットワーク構成、監査性、リージョン要件などが重要です。
特に金融、公共、製造、医療といった業界では、次のような要件が求められます。
- 入力データがどこに送信されるのか
- データがモデル学習に利用されないか
- データがどのリージョンに保存・処理されるのか
- インターネットを経由せずに利用できるか
- 運用者アクセスをどのように制御するか
- 監査・コンプライアンス要件に対応できるか
Amazon Bedrockは、こうしたエンタープライズ要件を考慮した生成AI基盤として位置付けられています。
AWS PrivateLinkによるプライベート接続
Amazon Bedrockは、AWS PrivateLinkを利用したプライベート接続を構成できます。
これにより、VPCからインターネットを経由せずにBedrockへアクセスするアーキテクチャを検討できます。社内ネットワークや既存のAWS環境と組み合わせることで、閉域性を意識した生成AIの利用につなげられます。
データ保持とモデルプロバイダーへのデータ開示
セッションでは、データ保護の観点として、モデルプロバイダーにデータを保持させないポリシーも説明されました。
企業が生成AIを利用する場合、プロンプト、会話履歴、検索対象の社内ドキュメントには、機密情報や個人情報が含まれる可能性があります。
そのため、生成AIサービスを選定する際には、以下を明確に確認する必要があります。
- 入力データ・出力データの保存先
- 保存期間
- モデル学習への利用有無
- モデルプロバイダーとのデータ共有範囲
- アクセス制御と監査ログ
- データ削除や保持に関するポリシー
東京リージョンに閉じたAI利用
日本企業にとって、データの所在やリージョンは重要な要件です。
特に規制産業では、グローバルなエンドポイントだけではなく、東京リージョンに閉じた構成を必要とするケースがあります。国内のデータレジデンシー要件を意識した選択肢があることは、生成AIを全社規模で展開するうえで重要なポイントです。
Amazon Bedrock AgentCore:AIエージェントを本番運用へ進める
AIエージェントを構築する場合、LLMにプロンプトを渡して回答を生成するだけでは終わりません。
業務で動作するエージェントには、以下のような機能が必要になります。
- ユーザー・エージェントのアイデンティティ管理
- ツール利用時の認証・認可
- APIや外部システムとの接続
- エージェントのメモリ
- サンドボックス環境
- 実行ログと可観測性
- セキュリティ対策
- 評価と品質管理
- エージェントのオーケストレーション
これらをゼロから設計・実装・運用することは大きな負担です。PoCでは動いても、本番環境に移行しようとすると、セキュリティや運用の壁に直面するケースも少なくありません。
そこでAWSが提供するのが、Amazon Bedrock AgentCoreです。
AgentCoreは、AIエージェントの構築・実行・保護に必要となる周辺機能をマネージドに提供し、本番利用を支援する基盤です。
モデルを「脳」、AgentCoreを「手足を動かすための基盤」と捉える
セッションでは、モデルを「脳」、エージェントの各種コンポーネントを「手足」、そしてそれらを適切に動かす仕組みを「ハーネス」とする比喩が紹介されました。
どれだけ高性能なモデルを使っても、以下のような周辺機能がなければ、業務を安全かつ確実に実行することはできません。
- 社内データを参照する
- 外部ツールを呼び出す
- 権限を確認する
- 実行履歴を残す
- エラーを検出する
- モデルを切り替える
- セキュアな環境で処理する
AgentCoreは、こうしたエージェントの実用化に必要なコンポーネントをまとめて扱うための基盤として紹介されました。
AgentCore Harness:数回のAPI呼び出しで動くエージェントへ
今回紹介されたアップデートの1つが、AgentCore Harnessです。
AgentCore Harnessは、エージェント構築時に必要となるオーケストレーションやインフラ構築の負荷を減らし、短時間で動作するエージェントを作ることを目指した機能です。
セッションでは、主な特徴として以下が紹介されました。
- 数回のAPI呼び出しでエージェントを作成できる
- オーケストレーションコードを個別に実装する必要がない
- インフラ構築を意識せずに利用しやすい
- さまざまなモデルを利用できる
AIエージェントの構築で重要なのは、モデルの進化に追随できることです。
たとえば、新しいモデルが登場した際に、エージェントの実装全体を作り直す必要があると、継続的な改善が難しくなります。AgentCore Harnessのように、モデルとエージェント実行基盤を分離できる構成は、将来的なモデル変更やコスト最適化にも有効です。
AgentCore Web Search:最新のWeb情報でエージェントをグラウンディング
LLMには、学習データのカットオフという制約があります。
どれほど高性能なモデルであっても、学習後に発生したニュース、制度変更、製品発表、市場動向などを標準では把握していません。
この課題に対して重要になるのが、外部情報を取得し、回答の根拠として利用するグラウンディングです。
今回紹介されたのが、AgentCore Web Searchです。
AgentCore Web Searchでは、最新のWeb情報をエージェントの回答に活用できます。スライドでは、以下のポイントが示されていました。
- Webから必要な関連情報を抽出する
- AWS環境内でネイティブに動作する
- データとクエリがAWSの外に出ない
最新情報を必要とするエージェントでは、Web検索の統合が有効です。
たとえば、以下のようなユースケースが考えられます。
- 市場・競合の最新動向調査
- 最新の製品情報やリリース情報の収集
- 法令・制度改定に関する情報収集
- ニュースをもとにしたレポート作成支援
- 営業・マーケティング向けのリサーチ支援
一方で、Web情報には信頼性、鮮度、著作権といった懸念もあります。エージェントの回答を業務で利用する場合は、情報源の表示や人によるレビューを組み合わせる設計が重要です。
Amazon Bedrock Managed Knowledge Base:企業データを使うフルマネージドRAG
AIエージェントを業務で活用する際、Web情報と同じくらい重要なのが、企業内に蓄積されたデータです。
多くの企業では、ナレッジが以下のような複数の場所に分散しています。
- Amazon S3
- SharePoint
- Google Drive
- Confluence
- OneDrive
- PDF、Word、PowerPointなどのファイル
- マニュアル、規程、議事録、提案書
- 製品資料、FAQ、設計書
- 画像・動画を含む非構造化データ
こうした情報をAIエージェントに安全に参照させ、根拠のある回答を生成する仕組みとして、RAG(Retrieval-Augmented Generation)が活用されています。
今回紹介されたのが、Amazon Bedrock Managed Knowledge Baseです。
フルマネージドRAGでエンタープライズデータにエージェントをグラウンディング
Amazon Bedrock Managed Knowledge Baseは、エンタープライズデータを活用したRAGを、マネージドに構築・運用するためのサービスです。
セッションでは、以下の特徴が紹介されました。
- フルマネージドRAG
- データの解析、チャンク分割、保存、取り込みをマネージドで実施
- S3、Web Crawler、SharePoint、Confluence、Google Drive、OneDriveへのコネクター
- エージェント型検索やマルチステップクエリに対応
RAGを自前で構築する場合、単にベクトルデータベースを用意すればよいわけではありません。
以下のような設計・運用が必要になります。
- データソースとの接続
- データ更新の検知と同期
- 文書の解析
- チャンク分割
- ベクトル化
- インデックス作成
- 検索精度の評価
- 権限管理
- 回答根拠の提示
- エージェントとの連携
Managed Knowledge Baseは、こうしたRAG基盤の構築・運用負荷を下げ、企業データをAIエージェントに接続しやすくするサービスとして期待されます。
特に、複数のSaaSやストレージにデータが分散している企業にとって、各データソースに対するコネクターが提供されることは大きな価値があります。
AWS Context:データとエージェントのためのコンテキストインテリジェンス
今後提供予定のサービスとして AWS Context も紹介されました。
AWS Contextは、あらゆるデータとエージェントのための大規模なコンテキストインテリジェンス基盤として位置付けられています。
スライドでは、以下の特徴が示されていました。
- 自己学習型ナレッジグラフ
- Apache Icebergネイティブのメタデータ
- エージェントスキルの共有
- 構造化データ・非構造化データの双方に対応
- AWS Glue Data CatalogおよびAmazon SageMaker Unified Studioとの統合
なぜコンテキストが重要なのか
AIエージェントは、モデルが高性能であるだけでは、すぐに業務で活躍できるわけではありません。
具体的には、以下のような情報が必要です。
- 組織のルール
- 業務プロセス
- 社内用語
- データの意味
- システム間の関係
- 過去の判断基準
このような背景情報が「コンテキスト」です。
RAGは関連する文書を検索し、回答に利用する仕組みです。一方でAWS Contextは、データ間の意味や関係性も含めて扱い、エージェントが組織のコンテキストを理解するための基盤として期待されます。
まとめ
AWS Bedrock LLM Day Japanのキーノートでは、Amazon Bedrockを中心に、モデル選択、エージェント構築、企業データ活用、本番運用までを支えるAWSの方向性が紹介されました。
生成AI・AIエージェントの技術は急速に変化しています。そのため、特定のモデルや実装だけに依存するのではなく、将来の変化に追随できる構成を選ぶことが重要です。
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参考文献
- AWS Bedrock LLM Day Japan
- Amazon Bedrock
- Amazon Bedrock のよくある質問
- Amazon Bedrock AgentCore
- AgentCore ハーネスの一般提供を開始
- エージェント型ウェブデータ取得に使用できる Amazon Bedrock AgentCore での Web Search の紹介
- Amazon Bedrock マネージド型ナレッジベースの一般提供が開始
- Build a managed knowledge base
- Context intelligence for your data and AI agents at scale
- Data retention
- Amazon Bedrock のセキュリティ、プライバシー、責任ある AI
- Use interface VPC endpoints (AWS PrivateLink) to create a private connection between your VPC and Amazon Bedrock
- OpenAI
- AWS Glue データカタログがビジネスコンテキストとセマンティック検索のサポートを開始 (プレビュー)





