Amazon Bedrock AgentCore に関するアップデート

本記事は、AWS Bedrock LLM Day Japan にて開催された「NYC Summit 2026におけるAmazon Bedrock AgentCore のアップデート」セッションの参加レポートです。

本セッションでは、AWS Summit New Yorkで発表されたAmazon Bedrock AgentCoreの新機能を中心に、エンタープライズデータを活用するRAG基盤、Web検索、Agent構築・運用を効率化する仕組みが紹介されました。

本記事は、2026年7月28日(火)に開催されたAWS主催 AWS Bedrock LLM Day Japan で発表された内容をもとに作成しています。対応モデル、リージョン、料金、利用可能な機能、データ保持仕様などは変更される可能性があるため、実際の導入時には必ずAWS公式ドキュメントをご確認ください。

忙しい人向け:アップデートの要点

  • Bedrock Managed Knowledge Base(BMKB)

    • データソースを接続するだけで利用できるフルマネージドRAG基盤
    • ベクトルDB運用の負担を減らし、ACLやAdvanced Indexingにも対応
    • 東京リージョンでGA
  • AgentCore Gateway

    • BMKBをAgentCore Gateway経由でMCPツールとして公開し、AgentやMCP互換Clientから利用
    • 認証、Policy、Observabilityと連携し、安全性と運用性を高める
  • Web Search Tool

    • AgentCore Gatewayに組み込めるフルマネージド検索MCPツール
    • zero data egress やドメインフィルタリングに対応
    • 最新のWeb情報をAgentの根拠として活用できる
  • AgentCore harness

    • GA済み
    • Agent Loop、モデル、メモリ、Skills、可観測性、評価、バージョニングなどを統合
    • Agent開発・運用の土台を簡素化し、業務ロジックに集中しやすくする
    • Step Functionsとの連携やコードへのエクスポートも可能
    • ノーコードで構築可能

Agent構築は依然として難しい

セッションでは、Agentを構築するために考慮すべき要素が多岐にわたる点が紹介されました。

Agentを実装・運用するには、たとえば次のような準備が必要です。

  • LLMモデルの選定・接続
  • Agent Loopの実装
  • Agent実行用ランタイムの準備
  • デプロイパイプラインの構築
  • メモリの統合
  • Skillsの利用
  • MCP Serverや各種ツールの接続
  • 検索機能やブラウザ操作の統合
  • コード実行環境の接続
  • 認証・認可
  • 実行ログやトレースの収集
  • 評価・テスト・改善サイクル
  • 設定変更時の再デプロイやアーキテクチャ再設計

ツール・検索・メモリ・ガードレールなどが分散すると、構築や運用の複雑性が高くなります。
これらの課題に対して、AWS は Amazon Bedrock AgentCore を提供しています。

Bedrock Managed Knowledge Base(BMKB)とは

Bedrock Managed Knowledge Base(BMKB) は、データソースを接続するだけでRAGを利用できる、フルマネージドなKnowledge Baseです。

従来のRAG構築では、以下のような構成要素を個別に設計・運用する必要があります。

  • 文書の取得
  • 文書解析・パース
  • チャンク分割
  • 埋め込みベクトルの生成
  • ベクトルデータベースの準備・運用
  • インデックス作成
  • 検索
  • リランキング
  • アクセス制御

BMKBでは、これらの一連の処理をマネージドで利用できます。

BMKBのポイント

セッションでは、BMKBの主な特徴として以下が紹介されました。

  • データソースを接続するだけでフルマネージドRAGを利用可能
  • ベクトルデータベースの構築・運用を不要にできる
  • Amazon S3やSharePointなどのデータソースを利用可能
  • ACLに対応し、データごとのアクセス制御を考慮できる
  • Advanced Indexingにより、図・音声・動画なども扱える
  • 東京リージョンでGA

社内規程、業務手順書、製品資料、技術文書、会議録などをAgentから参照させたい場合、データ連携から検索までを一貫してマネージドに扱える点が大きな特徴です。

AgentCore Gatewayとのネイティブ統合

BMKBは、AgentCore Gateway とネイティブに統合されます。

この統合により、BMKBをAgentCore Gateway経由で、AgentやMCP互換Clientから利用できます。

AgentCore Gatewayは、Knowledge Baseへの接続経路となるだけではありません。AgentCore PolicyやAgentCore Observabilityとも連携し、Agentが安全かつ追跡可能な形でKnowledge Baseを利用できるようにします。

インバウンド・アウトバウンド認証

Gatewayでは、インバウンド・アウトバウンドの認証を扱えます。

Agentから各サービスへ接続する際の認証処理を統合的に考えられるため、外部システムや社内システムとの連携において重要な役割を持ちます。

AgentCore Policyとの連携

AgentCore Policyと連携することで、定義済みのポリシーに基づいてアクセスを評価できます。

属性ベースアクセス制御であるABAC(Attribute-Based Access Control) が紹介されました。

たとえば、以下のような属性に応じた制御を想定できます。

  • 利用者の所属部門
  • 利用者のロール
  • 利用者の雇用形態
  • 利用者の権限レベル
  • ドキュメントの分類
  • 対象データの機密区分

これにより、「Agentが検索できる」だけでなく、「誰が、どの条件で、どのデータにアクセスできるか」を制御することが可能になります。

AgentCore Observabilityとの連携

Agentは、LLM呼び出し、ツール呼び出し、検索、複数のステップをまたいで処理を進めます。そのため、本番運用では以下を確認できる必要があります。

  • Agentがどのツールを呼び出したか
  • どのKnowledge Base検索を行ったか
  • Policyによって許可・拒否されたか
  • どのような入力・出力で処理が進んだか
  • エラーや遅延がどこで発生したか

AgentCore Gateway、Policy、Observabilityを組み合わせることで、社内データを扱うAgentに必要な統制と可観測性を確保しやすくなります。

Web Search Tool:フルマネージドな検索MCPツール

Web Search Tool は、AgentCore Gatewayに組み込まれたフルマネージドの検索MCPツールです。

Agentが社内Knowledge Baseだけでなく、Web上の最新情報を参照する必要がある場合があります。たとえば、以下のようなユースケースです。

  • 最新ニュースの収集
  • 市場動向の調査
  • 公開ドキュメントの検索
  • 競合情報のリサーチ
  • 技術仕様や公式ドキュメントの確認
  • FAQに存在しない外部情報の補完

Web Search Toolを利用することで、Agentは必要に応じてWeb検索をツールとして呼び出せます。

Web Search Toolのポイント

セッションで紹介された主な特徴は以下です。

  • AgentCore Gateway組み込みのフルマネージド検索MCPツール
  • us-east-1 で提供
  • Amazon独自の検索スタックを利用
  • zero data egress を実現
  • ドメインフィルタリングに対応

zero data egressとは

Web検索をAgentへ組み込む際、入力情報や利用者のコンテキストが外部へ送信されることは、セキュリティ・コンプライアンス上の懸念になり得ます。

Web Search Toolの特徴としてzero data egressがあります。

特に、企業内のデータやユーザー情報を扱うAgentでは、以下の観点を設計段階から検討する必要があります。

  • 検索クエリへ機密情報を含めない
  • 社内情報と外部情報の境界を明確にする
  • 参照可能なWebサイトを制限する
  • 検索結果をそのまま信頼せず、根拠や出典を提示する
  • Web検索の利用状況を監査可能にする

ドメインフィルタリングを使うことで、たとえば公式サイト、公式ドキュメント、信頼できる特定メディアなどに検索対象を絞る運用が考えられます。

AgentCore harness:Agent Loopの構築を簡素化する

AgentCore harness は、Agent Loopに必要なAgentCoreの各機能を自動で組み合わせ、Agentの構築を支援する仕組みです。

セッションでは、AgentCore harnessがGA済みであり、ノーコードでAgentを構築できる点が紹介されました。

Agentの基本的なループは、概念的には以下のように表せます。

この一連の流れを本番環境で安定運用するには、モデル、メモリ、ツール、ポリシー、可観測性、評価、デプロイなどを統合する必要があります。

AgentCore harnessは、この統合部分を簡素化し、Agent開発の立ち上げを加速します。

AgentCore harness GAに伴う新機能

任意のモデルを利用可能

AgentCore harnessでは、OpenAI on BedrockおよびLiteLLMへの対応が紹介されました。

モデルごとに得意なタスクやコスト、レイテンシ、コンテキスト長などが異なります。そのため、ユースケースに応じてモデルを使い分ける設計が重要です。

Memoryのデフォルト利用

memory を設定することで、AgentCore Memoryを自動的にプロビジョニングできる機能が紹介されました。

メモリは、会話の継続性やユーザーごとの文脈を扱う際に重要です。

たとえば、以下のような情報を次回以降の応答に活用できます。

  • ユーザーの過去の質問
  • 利用者の好みや設定
  • 進行中のタスクの状態
  • 会話内で確定した条件
  • 問い合わせ対応の履歴

ただし、メモリに何を保存するかは慎重な設計が必要です。特に業務システムでは、個人情報、機密情報、保存期間、削除要件、閲覧権限を明確にすることが求められます。

Skillsの利用

AgentCore harnessでは、Agent Toolkit for AWS を使ったSkillsの利用が紹介されました。

Skillsは、Agentが実行できる専門的な処理やツール群を再利用しやすい形で提供するものとして捉えられます。

たとえば、以下のようなSkillsをAgentに付与する構成が考えられます。

  • 社内文書を検索するSkill
  • チケットを起票するSkill
  • 在庫情報を取得するSkill
  • データベースを検索するSkill
  • レポートを作成するSkill
  • 外部APIを呼び出すSkill

Agentにすべての機能を直接実装するのではなく、再利用可能なSkillsとして整理することで、Agentの機能追加や保守を行いやすくなります。

統合されたObservability

AgentCore harnessでは、Agentの実行を横断的に追跡する統合Observabilityも紹介されました。

Agentは、単一の関数呼び出しで完結するのではなく、LLM推論、ツール実行、検索、再試行、ポリシー評価などを組み合わせて動作します。

そのため、運用時には以下を追跡できることが重要です。

  • どのモデルが使われたか
  • どの入力に対してどの出力が生成されたか
  • どのツールが呼び出されたか
  • どの検索結果が利用されたか
  • どこで失敗・遅延が起きたか
  • 意図しないツール呼び出しが発生していないか

単一トレースでAgentの処理フローを確認できるようにすることで、障害調査や品質改善を進めやすくなります。

Evaluate & Optimize

Agentの品質は、単に「回答が生成されたか」だけでは評価できません。

以下のような観点で継続的に評価する必要があります。

  • 正確性
  • 根拠の妥当性
  • 指示追従性
  • 回答の安全性
  • ツール選択の適切さ
  • 検索結果の利用精度
  • レイテンシ
  • コスト
  • ユーザー満足度

AgentCore harnessでは、評価・最適化のワークフローと、精度のA/Bテストを支援する機能が紹介されました。

本番導入では、プロンプト、モデル、ツール、検索設定、ガードレールなどを変更した際に、既存品質が悪化していないかを確認する仕組みが重要です。

バージョニングとエンドポイント

AgentCore harnessでは、Agentのフルバージョン管理と、迅速なロールバックを支援する機能も紹介されました。

Agentの変更対象は、アプリケーションコードだけではありません。

  • システムプロンプト
  • モデル
  • モデルパラメータ
  • ツール定義
  • Knowledge Base
  • Memory設定
  • Policy
  • ガードレール
  • 評価データセット

このため、Agentを本番運用する際は、変更の追跡、検証、段階的なリリース、問題発生時のロールバックを考慮する必要があります。

まとめ

Amazon Bedrock AgentCoreのアップデートにより、RAG基盤、Web検索、Agentの構築・運用をよりマネージドに扱いやすくなりました。

BMKBとAgentCore Gatewayを組み合わせることで、社内データを安全に検索・活用するAgentを構築しやすくなります。また、Web Search Toolにより最新の外部情報も活用可能です。

さらにAgentCore harnessは、モデル、メモリ、Skills、評価、可観測性などを統合し、Agent開発から本番運用までの複雑さを軽減します。

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参考文献

この記事を書いた人

aws-recipe-user